第16回 新宿講演会
開催月日:2017年06月17日(土)
開催場所:エステック情報ビル 21階 会議室B
当日は梅雨の晴れ間の五月晴れであった。吹き渡る風は心持冷たく、乾燥しているため大変心地よい1日であった。21階から見下ろす新宿駅には電車が着くたびに人の群れが波打っていた。
今回は、腎臓病治療のガイドラインの実施状況についてお伝えします。
はじめに
日本腎臓学会は、「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」を発行しています。このガイドラインは、腎臓研究の専門医がそれ以外の医師たちに腎臓病の治療方法を伝えるものです。いわゆる、クリニックの先生たちの教科書といえましょう。クリニックの先生方がこのガイドラインに沿って治療することにより、全国に散らばる腎臓病患者が、等しく最新で最高の治療を受けられるようになりました。
しかし、ガイドラインどおりの治療は2つの理由から、厳密に実施されているとは言い切れません。1つは、医師の治療経験の違いや、ガイドラインを読み解く姿勢の違いなど、もう1つは、患者の生活の違いや病気に向き合う姿勢の違いなどがあげられます。ですからガイドラインはあくまでも治療の目安であって、治療は医師ごとに、患者ごとに異なります。そこで、内臓トレーニング実践者の報告から2つの話題を拾ってみました。
1 慢性腎臓病と診断したときの医師の対応はまちまち
慢性腎臓病の診断は、eGFRの数値が60を切ったり、3ヶ月以上継続して、尿に蛋白が出ることが目安になっています。診察後に、腎臓は再生しない臓器であるが、まだ60%も残っているから大事に使うようにと、親切に詳しく病気の説明をする医師がいる反面、ぶっきら棒に腎臓病は治らず最後は透析になると宣言する先生や、「腎臓病ってどんな病気ですか?」と聞くと、ネットで調べなさいという医師もいるそうです。
2 透析に入る時期がガイドラインよりも早まってきている
(1)透析導入時期はクレアチニンの数値が8.00mg/dl
厚労省の血液透析導入基準(1991年)では、透析導入の時期を、①症状・所見、②腎機能、③日常生活の障害の程度、という3つの観点から総合して判断することになっています。ですから、クレアチニンの数値が5.00mg/dlであっても、胸に水が溜まったり、心不全になったりすれば透析に入る場合があります。逆に、クレアチニンの数値が10.00mg/dlを超えていても、尿毒症の症状が無ければ透析を遅らせることもあり、導入時期は様々です。しかし、多くの医師は透析導入時期を、クレアチニンの数値が8.00mg/dlを超えたところを目安にしているようです。
(2)透析導入が早まる理由
内臓トレーニング実践者の中には、クレアチニンの数値が2.00mg/dlを越えたところで教育入院、3.500mg/dlを超えてシャント手術をし、6.00 mg/dlを超えたところで透析に入るよう指示された人がいます。この例は特別ではありますが、実践者のほとんどは腎機能に限ると8.00 mg/dlを待たずに透析導入を勧められています。主治医が早期導入を勧める理由は、①やがて透析に入るのは間違いないから尿毒症の苦しみを避けたほうがよいだろう。②尿毒症で体力を使い果たしてから透析に入るより、体力に余力があるうちに透析に入れば透析が楽になるから、というものです。
(3)少しでも長く健常人としての生活を送りたい
内臓トレーニング実践者の多くは、主治医から早期導入を呼びかけられても、内臓トレーニングに励んで尿毒症を改善し、透析に入るのを1日でも遅くしたいと考えています。少しでも長く健常人としての生活を保ちたいからです。
(4)腎臓病は生活の中で治療しよう
主治医の先生方は、ガイドラインに沿って、患者さんの症状や病気の進行状況をみながら治療を行っています。しかし、お医者さんが患者さんと接するのはほんの一瞬です。長い生活の中で腎臓病を発症した患者さんの生活は分かりません。いくら医療が発達しても、主治医の治療はあくまでも参考意見でありアドバイスと心得て、患者さん自身が、自らの生活の中で病気をコントロールしていかなければなりません。頑張ってください。
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