腎臓の働き

腎臓は、どのような働きをしてくれているのでしょうか。
また、機能が失われることで、どのような症状がでてくるのでしょうか。

老廃物の排出

腎臓は血液をろ過して、代謝産物(クレアチニン)や老廃物(尿素窒素、 尿酸など)や塩分を、尿として体の外へ排出してくれます。
機能が低下してくると老廃物や余分な水分が体内にたまり、むくみが出たり、体がだるくなります。
さらに毒素が排出できなくなると、吐き気や頭痛、食欲不振などの尿毒症を起こします。末期には、心不全や肺水腫などの合併症を起こし、生命の危機に陥ってしまいます。

血圧の調節

腎臓は人体機能を、維持するために、心臓から送り出される血液の20%強もの供給を受けている臓器で血圧と密接な関係があります。通常は血圧を安定させるため、体内の水分と塩分量を調整しています。
しかし、腎臓病になると血圧が高くなるような働きをしてしまうのです。腎臓の機能が低下してくるとレニンと呼ばれる酵素の分泌量が増えます。このレニンは血液中のタンパク質に働きかけ、アンジオテンシンとよばれるポリペプチドを作ります。この物質が血管を収縮させるので血圧が高くなるのです。高血圧は、慢性病の温床で腎臓だけでなく、ほかの臓器や血管に負担をかけてしまいます。

造血作用

腎臓から出るホルモン(エリスロポエチン)が骨髄に働きかけ、血液中の赤血球の生産を促します。腎臓の働きが悪くなると、このホルモンが出てこなくなってしまうため、血液が十分につくられず貧血になります。貧血になると疲れやすい、食欲不振、頭痛、動悸、息切れ、めまい、立ちくらみなどの症状が出てきます。

水分調節

体の水分や電解質(ナトリウム、カリウム、リン、カルシウム、マグネシウムなど)は不可欠なものですが、多すぎても少なすぎても悪影響がでます。腎臓はそれらの量を調節することで、体内環境のバランスを保っています。腎臓は、1日におよそ150Lの水分をろ過していますが、その99%は再吸収され、残り1%、約1.5Lほどが尿として排出されます。機能が低下して体液量の調節がうまくいかなくなると、体がむくんでしまいます。
また、イオンバランスがくずれると、疲れやめまいなど、体にさまざまな不調が現れます。ナトリウムは血圧、カリウムは心臓、リンは骨、カルシウムは血管壁、マグネシウムは筋肉や神経などに、多大な影響を与えます。

骨の強化

骨の発育には複数の臓器が関わっていますが、その中でも腎臓は、カルシウムを体内に吸収させるのに必要な活性型ビタミンDを つくっています。腎臓の働きが悪くなると、活性型ビタミンDが低下し、カルシウムが吸収されなくなって、骨が弱くなる骨粗しょう症などの症状が出てきます。

腎臓病の種類

糖尿病性腎症

現代日本の豊かな食生活と運動不足の生活により、糖尿病患者の数は年々増加し、「糖尿病が強く疑われる者」は約1,000 万人と推計され、平成9年以降増加しています。また「糖尿病の可能性を否定できない者」は約1,000万人とされ平成19年以降減少しています。(国民健康・栄養調査平成28年)

糖尿病性腎症は網膜症、神経症と合わせて糖尿病の3大合併症のひとつで、糖尿病が進行すると発症します。血液中の糖が腎臓の糸球体の毛細血管を破壊し、老廃物の濾過ができなくなって、高血圧やむくみなどの症状が出てきます。

神経障害 合併症の初期症状として多い
網膜症 最悪の場合失明、大人になってからの失明原因の第一位
腎症 最悪の場合尿毒症で透析、透析導入患者数の4割を占める

血管がもろくなり、血管が透析に耐えられなくなる前にシャント手術をすることにより、他の腎臓病だけの患者よりも早めに透析に入ることになります。

慢性糸球体腎炎

糸球体という器官が壊れる病気の総称です。腎臓には糸球体と呼ばれる毛細血管の集まった器官があります。これは全身から老廃物を運んできた血液を濾過する役目を持っています。この糸球体が壊れると体内に再吸収されるはずのタンパク質が尿の中に流れ出て、いわゆるタンパク尿や血尿が出るようになります。この時点ですでに病気が発症し、透析への入り口に立っているのですが、自覚症状がほとんどないため、発見が遅れることが多くなっています。
病気が進行するとむくみやだるさ、疲れやすい、食欲不振などの症状が出てきます。 なお、どうして糸球体が壊れるか、その原因はまだ分っていません。

IgA腎症

蛋白尿、血尿が生じる
慢性糸球体腎炎と同じく、糸球体が壊れる病気の一つです。糸球体に免疫グロブリンのIgAというタンパク質が沈着して発症します。自覚症状はありませんが、病気が進行すると尿タンパクや血尿が出て、食欲不振、疲れやすい、だるいなどの症状が出てきます。腎臓病は比較的高齢者の病気ですが、この病気は10代の若い人も多くなっています。
近年、ステロイドパルス療法や扁桃腺摘出手術が有効と言われ、受診者が増えていますが、ステロイドによる副作用などを心配して、事前に当クリニックを受診される人も増えています。

蛋白尿、血尿が生じる

ネフローゼ症候群

腹水、浮腫(むくみ)が生じる
糸球体基底膜が壊れることによって、尿に大量のタンパク質が流れ出し、血液中のタンパク質が減少し、むくみやコレステロールなどの脂質が増える病気です。原因は多々あり、糖尿病性腎症や膠原病などが原因のこともあります。
症状としては、尿が出にくくなり、顔や手足のむくみ、胸や腹部に水が溜まったりします。また、血液中に脂肪が溢れるので、血液が固まりやすく免疫力が落ちて感染症に罹りやすくなります。年齢に関係なく発症し、クリニックには小学生の患者も受診しています。

多発性のう胞腎

遺伝性があり、腎臓にのう胞(水がたまった袋)ができる病気です。その数が増え、袋が大きくなっていき、腎臓を圧迫して腎臓機能を低下させます。アルブミンなど、血液中のタンパク質の濃度が低下することによって、血液中の脂肪が増え、その結果、感染症にかかりやすくなります。
初期は自覚症状はありませんが、症状が進むと高血圧、食欲不振、疲れやすくだるいなどの症状が出てきます。また、のう胞が大きくなってくると腹部が膨らみ、圧迫感を感じるようになります。

腎硬化症

長い間、高血圧を放置しておくと、腎臓の毛細血管が硬く細くなって破壊されていきます。このため血液の流れが細くなり腎臓も硬くなっていきます。これが腎硬化症といわれる理由です。腎臓が硬くなると、腎臓に十分な血液が流れなくなりますから、腎機能も低下してきます。
初期は自覚症状がありませんが、症状が進むと高血圧、動脈硬化、むくみ、倦怠感、貧血、息切れなど腎臓病に共通する症状が出ます