『内臓トレーニング』は
医学の理にかなった健康法と言えます
静岡トレーニングクリニック 院長
医学博士 廣岡孝 先生
1.内臓トレーニングが目指すもの
内臓トレーニングでは、ふくらはぎ、足の裏、脊髄を刺激し、血液・リンパの流れを活性化し、内臓の機能を正常化し、自律神経のバランスを整えます。人間が生まれながらにして持っている自然治癒力を高め、病気にかかりにくい体を作ることを目指しており、いわゆる東洋医学を総合した健康法です。
2.自然治癒力を高める方法 ◎下半身の血液とリンパを流そう◎
①健康を細胞のレベルで見つめよう
人体は約60兆個の細胞で出来ております。その 60兆個の細胞に十分な酸素と栄養が行き届いていれば人間の体は健康を維持できます。十分な酸素と栄養が届かなくなった細胞は弱り、時には一部が壊れその機能を失ってしまいます。壊れたり機能を失ったりした部分がたまたま腎臓であれば腎臓病であり、肝臓であれば肝臓病という名称がつきます。
免疫力や自然治癒力を高めるには、腎臓とか肝臓とか人体の一部を見つめるのではなく、生命体としての最も基礎をなす細胞から健康を考えています。
② 血液を流しリンパ機能を高める
細胞に新鮮な血液と酸素を十分に送るには、血液のうち特に静脈とリンパを動かすことが大切です。腎臓で浄化され肺できれいになった血液は、動脈として心臓から体中に押し出されます。全血液の10分の3は頭部へ、残りの10分の7は心臓から下に送られます。
血液は細胞に栄養と酸素を送り、細胞から排出された二酸化酸素と老廃物を回収します。下半身の老廃物の90%は血液が、10%はリンパ液が回収します。新鮮な血液は心臓というポンプで勢いよく送り出されても、下半身に送られた血液は心臓に戻すためのポンプはありませんのでどうしても下半身に滞りがちです。
下半身に滞った血液を心臓に戻すには、運動をして、「第2の心臓」と呼ばれる、ふくらはぎを動かさなければなりません。医者が健康維持のために適度な運動、特に有酸素運動を勧めるゆえんです。リンパ液も血液に次ぐ「第2の循環系」といわれ、老廃物を心臓に戻す役目がありますが、静脈と同様にふくらはぎの筋肉に刺激を与えない限り、上半身で静脈血に戻ることが出来ません。
③ もし血液とリンパ液が流れないと
- 下半身の静脈が滞る
- 動脈の流れも滞る
- リンパの流れも衰える
- 炭酸ガス、余分な水分、老廃物が脚や腕などの細胞に溜まり始める
- 細胞に老廃物やコラーゲンが絡みつく
- 腎臓・肝臓など各種器官の機能が衰える
- 弱い器官に病気が発症する
- 体のバランスが崩れ、他の器官にも病気が発症する
④ 血液とリンパ液の流れが活性化すると
- デトックス効果(解毒効果)がある
- 肩こりなどが解消され体が柔らかくなる
- 高血圧が下がり、低血圧が上がる
- 体のむくみが解消される
- 睡眠不足が解消できる
- ストレスの解消ができる
⑤内臓トレーニングでは
ふくらはぎの筋肉を動かすことで歩いたり走ったりした時と同様に、静脈やリンパの流れを活性化する効果があります。
仕事で忙しく運動する暇のない人や病気などで運動できない人も簡単に取り組むことができます。
3.自然治癒力を高める方法 ◎内臓を鍛えよう◎
① 内臓を鍛える方法は難しい
自然治癒力、つまり、人体が、外界からの異物を排除できること、体内で発生した異常を自らの力で修復できるようにするためには内臓が健康であることが大切です。健康な内臓の条件は、内臓が体内の本来あるべき正しい位置にあること、体の動きに合わせてスムーズに移動できること、内臓を包んでいる膜と癒着していないこと、それぞれの臓器に十分な酸素と栄養が行き届いていることなどがあげられます。
しかし、内臓は私たちの意思とは関係なく自律神経でコントロールされていること、柔らかく壊れやすいこと、心臓のように骨格の中に隠れたものがあること、複雑に絡み合っていることなどから内臓を自分で管理することができません。東洋医学のマッサージや指圧でも体の奥までの治療は困難です。衰えた臓器はちじみ、小さく固くなります。これは臓器に新鮮な血液が十分に送り込まれないからです。
② 内臓トレーニングでは
東洋医学によると、足裏は「内臓の鏡」と呼ばれ内臓をコントロールする自律神経が集中しているといわれています。この内臓に直結した自律神経を刺激すると、内臓の働きを活発にすることができます。
このように、自然治癒力をつけるのに最も大切な内臓を、 誰でも、自宅で気軽に、健康にしていける健康法なので内臓トレーニングと命名しました。
4.自然治癒力を高める方法 ◎自律神経のバランスを整えよう◎
① 自律神経とは
自律神経は、内臓や血管、体温などからだの環境を整える神経です。暑い、痛いといった知覚神経や手を挙げたり走ったりという運動神経と違い、私たちの意思とは関係なく生命体としての人体を健康に保つ機能を持った神経の一つです。
自律神経は、興奮や緊張を司る交感神経とリラックスしたり睡眠を司る副交感神経の2つから構成されています。例えば、血圧を上げるのは交感神経で血圧を下げるのは副交感神経です。このように呼吸や血液循環をはじめ消化吸収を司る各臓器も排泄や内分泌も体のほとんどの器官は自律神経によってコントロールされています。
自律神経のコントロールは、間脳の視床下部にあり、交感神経も副交感神経も脊髄を通って各臓器など全身に張り巡らされています。
② 自律神経のバランスが崩れると
人間は、人間関係や仕事の悩みをはじめ、暑さ寒さ、睡眠不足や騒音など、外界から体内に入ろうとする刺激をストレスと感じ、防御のために人体は変化を起こします。この変化を起こすのが自律神経です。強いストレスを長期間受けているとストレス解消のため、交感神経だけが活発に働いたり、その逆の減少が起きたりします。
これが自律神経のバランスが崩れたときで、頭痛やめまい、息切れや肩こり、手足のむくみや冷え痺れ、生理不順など、いわゆる自律神経失調症といわれる様々な病気が発症します。現在の医療では、崩れた自律神経のバランスを回復するための方法として、薬物療法と心理療法が中心的に行われていますが、その治療方法は確立されているとはいえません。
③ 自律神経のバランスを整える
~脊髄通電法~
1957年 東京大学医学部第一内科の田坂定孝教授を中心とするグループが、自律神経に関する研究を発表しており、病状によっては40%~70%の確率で効果が出るといっております。
(※田坂定孝教授著「低周波脊髄・頭部通電療法」中外醫學社刊 一部抜粋)
~忘れられてしまった効果~
当時、脳卒中で半身不随になった患者が回復し「奇跡の療法」としてマスコミで話題となり、東大病院を一周半も囲む患者の列ができたそうです。そして、1958年からは、脊髄通電療法として全国の大学病院や国立病院で大々的に実施されるようになり一世を風靡する治療法となりました。
しかし、当時としては治療器具が非常に高価であったこと、希望する患者が多く需要に器具の数が間に合わなかったこと、診療報酬があまりにも安かったことなどの理由から、この療法は次第に行われなくなり、正しい使い方も、その効果も忘れられてしまったのです。
④ 内臓トレーニングは田坂教授の治療法を活用します
内臓トレーニングは田坂教授の原点に戻り、その療法を自律神経のバランスを整える方法として活用しています。
5.内臓トレーニングの効果
全身に血液とリンパを流すこと、内臓の働きを正常に保たれていることは人間が生きていくうえの基本です。それをより活発にするなら、健康な人はより健康になり、病気の人も健康に戻ることになります。 内臓トレーニングを実践した人たちの報告によれば、早ければ1週間、遅くても1ヶ月もすると体に良い変化が出てきます。病気を抱えた人がこのトレーニングを実践し、よい変化が現れた例を挙げると 以下のとおりです。
・高血圧症、低血圧症、冷え性、など自律神経の失調から来る様々な症状
・静脈瘤や手足のむくみなど静脈やリンパの滞りから来る症状
・肩こり、腰痛、手足の痺れなど血流の滞りにより発症する症状
・透析前の腎臓病 ・透析中の合併症予防(血圧の管理)
・筋萎縮症、パーキンソン病などの筋肉の硬直から来る症状
・筋萎縮症やパーキンソン病などの言語障害
・床ずれ ・リュウマチの痛み
中でも、腎臓病では、決して下がることのないといわれているクレアチニン値が正常値に戻ったという常識では考えられない結果も出ております。